理事長挨拶
2025年の宝仙学園

冨田道生
創立100周年に向けて飛躍する、宝仙学園の挑戦
学びの種が確かな成果を結んだ2024年
昨年は秋の宝仙祭をはじめ、部門ごとの学外研修や修学旅行、校外学習なども従来どおりに行われました。数年来の新型コロナウイルス感染症の影響が終息し、ようやく学園全体に以前の活気が戻ってきたことを大変うれしく思っております。保護者の皆さまならびに学園関係者の方々におかれましては、本学園の教育活動に対して平素より温かいご理解とご支援を賜り、心より感謝申し上げます。本年度も学園全体が一体となり、部門を超えて教育活動を充実させてまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
昨年度は富山県利賀村(現:南砺市)と短期大学時代から始まる大学との教育交流が5 0 周年を迎え、盛大な記念式典が行われました。また、高等学校では女子部ダンス部がイギリスで行われた世界大会に出場。3部門において見事優勝を獲得するなど、学園全体が飛躍した一年であったと自負しております。
現代の社会情勢を見渡すと、人手不足や物価高といった身近な経済現象から、猛暑や豪雨、大雪といった気候変動にいたるまでさまざまな変化が日常生活に影響を与えています。私たち宝仙学園といたしましても、これらの環境変化の波を乗り越え、学園全体のさらなる発展を実現することが重要な使命であると改めて実感しています。そのような志を糧とし、宝仙学園は創立100周年に向かい、未来の教育を担う大きな夢の実現に向けて総力を挙げて取り組んでまいる所存です。
仏教の教えを基に、豊かな心と知性を育む
宝仙学園の建学の精神は、「仏教精神を基調とした人間教育によって、品格と知性を兼ね備えた人を造る」という理念に基づいており、創立当初から仏教の考えである「自利と利他」の教えを大切にしています。「自利」は自分自身を高め、「利他」は他者に尽くすことを指しますが、このふたつは対立するものではなく互いに作用し、調和していくものです。SNSが普及した昨今は匿名性を利用した誹謗中傷や不適切な投稿が問題視されており、教育者としてつねに心を痛めています。
相手を思いやる気持ちや感謝の心を重んじる「自利と利他」の教えは、子どもたちが健やかな心を保つための支えとなります。このような心の教育は、自身を成長させ自己肯定感を高めるとともに他者への尊重を促し、社会に必要な多くの利点をもたらすことでしょう。
多くの情報があふれる時代、誤った内容や虚偽のニュースに惑わされることなく、知識を知恵として活用していく力が求められます。創立時より自らの経験を重んじている宝仙学園では、体験学習等を通して物事の本質に触れることで、情報に惑わされることのない意思をもった子どもの育成をめざしています。
唯一無二の総合学園として、新たな可能性へ
宝仙学園ではグローバル教育、リーダー教育、情操教育の3つを軸に特色ある教育を行っており、2025年の時点で学生、生徒、児童、園児の総数が2431名となりました。
開学90周年を迎えるこども教育宝仙大学は「存在感あふれる保育単科大学を作り上げる」という理念のもと、幼稚園教諭および保育士の実就職率が全国一位という栄誉を今年度も維持しています。オーストラリア保育留学制度では留学生全員がオーストラリアでの保育資格を取得。2名の学生が現地で保育職に就きました。
中学校・高等学校は「知的で開放的な広場」を標榜し、保護者の方々との協力関係を強化しながら新たな学校文化の醸成に取り組んでいます。順天堂大学系属理数インターでは新たに新設された「医学進学コース」を含め、探究学習や英語教育を強化。一方の女子部はダンス部の世界優勝で明るい話題を提供してくれています。
小学校では「自ら学び チャレンジと共創から未来をつむぐ」という新たな教育方針のもと、開かれた学校作りを実践。保護者や卒業生の方々に協力いただき、本学初の試みとなる「宝仙ミライ学びフェスタ」も開催されました。新たな特色づくりとして英語活動にも注力し、英検ジュニアの運営や英検準会場の設営、オーストラリアでのイングリッシュキャンプ留学を実施等の取り組みを推進し、グローバル教育を強く意識した教育プログラムの開発も進めています。
幼稚園は「あそびの中に、学びをつくる。あそびの中で、人をつくる」をテーマに、子ども一人ひとりの個性と向き合いながら、生きるうえで必要な力を身につける幼児教育を行います。英語教育にも力を入れ、遊びの時間に英語のやりとりを楽しむなど、自然なかたちで英語に親しんでいく機会をつくっています。
今年度より創立100周年記念事業としての新校舎建設工事がいよいよ始まります。新校舎には小中高大の4部門が入居し、サイエンスエリア、アート&クラフトエリア、ダンス&ミュージックエリアとして小中高で共用する施設が整備されることになります。本学園の未来の教育のあり方を具現化した新校舎は学園の新たなランドマークとなり、小学校から大学までが集う総合学園ならではの取り組みを実現させることでしょう。
新校舎の名称は「宝仙百年館 The Terrace」で、このネーミングには校舎の特徴的なデザインと未来を「照らす」という意味が込められています。なお、工事期間中、高等学校女子部の教室および中学・高等学校の一部授業を外部へ移転することとなります。この間、関係者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
学園創立100周年に向けて刷新していく宝仙学園にぜひご期待ください。
2025年5月